2010年11月9日

平岡淳子 17才の詩

「放課後」  わすれなぐさ

「いらっしゃい、すわりなさいよ」
放課後の職員室で N先生の声をきいた
現代国語のその先生が
私はずっと好きだった

先生とむかいあってすわった
私は それだけでドキドキしていた
「受験、大変でねぇ」と言ったあと
先生は 太宰治の清貧譚のはなしをして下さった
菊の花を愛する 三十二歳の男と
色が溶けるほど白い 二十歳くらいの娘が
結ばれるはなしだった
「いいですねぇ」
先生は ただひとことそう言った
私は 紅くなって
それが
先生と私だったならと思った


「詩とメルヘン」掲載作品

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